正しくありたい、とは思っている。 【オリジナル小説】【短編】

 

 
 
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オリジナル小説です。
 


 
 
 
※この作品は、フィクションです。
 
 
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正しくありたい、とは思っている。
 
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「おばちゃんって、パパ活したことある?」
 
 
姉の子どもに、急にそんなことを聞かれたら、
誰だって、驚くだろう。
 
 
「とりあえず、なんでそんなことを聞いたのかを、聞こうか」
 
 
質問の意図がわからないと、
どう答えたらいいのか、わからない。
 
 
「なんか、クラスの子達に一緒にパパ活しないかって誘われたんだけど」
 
 
うん、もう友達やめてしまえ。
 
 
「その子は、パパ活してるの?」
「してるみたい。なんか、そのパパに今度友達も連れてきてって言われたって」
「で、あんたはどうしたの?」
「断ったけど、ちょっとしつこくて」
 
それは、パパに脅されているとか、
ちょっと、まずい感じなのでは?
 
大丈夫か?
 
 
「友達は困っている感じ?」
「いや、なんか友達連れてきたら、もっとお金もらえるとか言ってた」
 
 
あ、女子高生でハーレムを作りたいのかな。
 
 
「下手に担任とか親に言えなくて、だからおばちゃんに相談したんだけど」
 
 
犯罪行為だからなぁ。
でも、姪っ子が巻き込まれるのも、困る。
 
 
「あんたは、する気ないんだよね?」
「ないよー。自分のバイトだけで十分だし。おばちゃんに投資も教えてもらったから、そっちを頑張りたいし」
 
 
うん、不労所得最高だしね。
 
 
それにしても、その友達には困ったものだなぁ。
 
「あんたにしか声かけてないの?」
「いや、何人かに声かけてたみたい」
「うーん、じゃあ大丈夫じゃないかな」
「なんで?」
 
 
姪っ子に聞いたところ、友達に声をかけられたのは、
2日前らしい。
 
そこから、何人かに声をかけていて、
断られても、メッセージアプリなどで「30万もらえるんだよ!」と強引に誘おうとしているらしい。
 
 
だから、まあ。
すぐに解決するとは、思う。
 
 
「1週間くらいで、なんとかなると思うから。ひたすらに無視して、様子見てな」
 
 
姪っ子は納得できないような顔をしていたけれど、
「何かあったら、お姉ちゃんに相談しな。怒ったりしないと思うから」というと、納得してくれた。
 
 
 
3日後、姪っ子から連絡が来た。
 
 
パパ活をしていた友達は、退学処分になったらしい。
 
姪っ子と同じように誘われた友達が、親に相談して、
その親は、学校には連絡せず、
直接、警察に相談に行った。
 
生徒間で、彼女がパパ活をしていることは噂されていたが、
今回、明確な証拠が出てしまったため、
学校側としては、退学処分としたらしい。
 
 
まあ、何か犯罪に巻き込まれて、
学校に迷惑がかかる前に、排除したということだろう。
 
 
まあ、組織なんて、そんなものだ。
 
 
 
さらに、3日後。
 
 
彼女が相手の男性に暴行を受けたらしいということだった。
 
おそらく、「あんたのせいで!」と詰め寄ってキレられたのだろう。
男なんて、そんなものだ。
 
都合のいい女が好きな男は、都合が悪くなると、暴力で相手を黙らせて都合の良いようにする。
 
 
それっぽいニュースはネットに流れていたし、
姪っ子の学校では、彼女だと確定されているらしい。
 
 
 
会ったこともない女の子のことを、
心配してやる優しい人間ではないが、
 
悲しい社会であるとは思う。
 
 
 
私自身は、パパ活、私の時代でいえば「援助交際」はしたことはない。
けれど、それをしている子たちを遠目で見ていた。
 
彼女たちは、ブランドバッグやブランド財布を持って、
高級化粧品を使い、「大人」になろうと必死だった。
 
 
私には、それが滑稽にしか見えなかったのだ。
 
 
羨ましいとか、嫉妬とかではなくて。
彼女たちが幸せそうだとは思えなかったから。
 
 
誰かを基準にしないと、自分の価値がわからないことが、
とても怖い。
 
人より、いいものを持ちたい。
人より、お金持ちでありたい。
人より、優遇されたい。
 
 
彼女たちは、いつも他人に振り回されていた。
 
 
今は、こう思う。
可哀想な人たちだったのだ、と。
 
 
自分の価値は、自分で決める。
それは、難しいことなのかもしれない。
 
けれど、それができるように努力しなければならない。
 
 
姉は、私にこう言った。
 
「うちの娘にお金の教育をしてほしい」と。
 
 
あの子が生まれる頃には、
私はフリーランスになっていて、投資もそれなりに結果を出していたから。
 
 
最初に教えたことは、
「正攻法が、成功法であること」だ。
 
法律に反すること、
自分が「これは、だめだ」と少しでも感じること、
倫理に反すること、人を貶めること、
 
それをして、お金を稼ぐことは、
あとで、大変なことになるということ。
 
実際の事件などを参考に出して、説明した。
 
 
目立たなくていい、後悔する必要はない、
ただ、他人を巻き込むことなく、
自分のためだけに、金を稼げと、
 
そう教えた。
 
 
その教えがあったからこそ、
姪っ子は、友達の誘惑を跳ね除けたのだろう。
 
後から聞いた話だが、あの子が初めに拒否したことで、
他の子達も、拒否できたらしい。
 
 
お金を稼ぐには、嫌なこともあるし、
少しくらいは、汚いこともしなくてはならない。
 
けれど、正しくあろうとする心だけは
捨ててはいけないのだ。 

 
 
 
 
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