バカは、どこにいるのか。【オリジナル小説】【短編】

 
 
「おはようございます」
 
 
身支度を整えて、リビングに顔を出すと、
父が経済新聞を読んでいた。
 
「おはよう」
 
母は、キッチンでベーコンエッグを焼いている。
 
「おはよう。ご飯、もう少しでできるから」
 
程よく焼けたトーストと、スープの匂い。
テーブルには、サラダと牛乳が置かれている。
 
父の向かいに座って、新聞を手に取る。
こちらは、地方新聞だ。
 
父はすでに読み終えているらしく、四つ折りになっていた。
 
 
無言で新聞を読む父と娘。
キッチンで朝食を作る母。
 
 
新聞の内容は、夕方のニュースやネットニュースにあったものばかりだが、
詳しく書いてあるので、いつも目を通すようにしている。
 
今は新聞を読む人が少ないと聞くが、
読んでみると、要点を綺麗にまとめてあって、わかりやすい。
 
テレビやネットでは、余計な情報が多くて
なんとなく合わないのだ。
 
半分くらい読み終えたところで、
 
「ご飯、できたわよ」と声がした。
 
母の言葉で、ダイニングテーブルに移動する。
 
「ほら、あなたも早く!」
 
なかなか動かず母に急かされ、新聞を置く。
 
 
「はい、いただきます」
「「いただきます」」
 
 
我が家では「朝ごはんは、家族揃って」と言うルールがある。
 
昼と夜は、仕事や学校でどうしても時間が合わない。
母が作り置きを冷蔵庫や冷凍庫に保管してくれているので、
それらを自分でチンして食べる。
 
母も自宅で仕事をしていて、
時間は自由に使えるものの、帰宅時間が読めない父や私に合わせて支度をしていると、
仕事のタイムテーブルが組みにくいらしい。
 
ゆえに、時間を合わせやすい朝ご飯を一緒に食べて、
あとはセルフサービスにしたのだ。
 
 
家族との会話は朝しかないので、
朝6時には朝食が開始される。
 
 
「最近、学校はどうだ?」
「ん〜、なんか荒れてるかな〜」
「何それ?」
「隣のクラスが担任いじめしててさ。ゴタゴタしてる」
「それは、大変だな」
「そういうのって伝染するからさ。うちのクラスでも始まったら学校行かずに自宅学習していい?」
「まあ、そんな状態じゃ行く意味がないしね〜」
「むしろ、早い段階で行かないいい方がいいんじゃないか?むしろ、辞めて高校検定でも受けたらどうだ?」
「まあ、様子見て決めるよ」
「進学校でも、色々あるのね〜」
「学力だけ高いバカの集まりだから」
 
 
そんな話をしながら、ゆっくりと朝食を食べる。
 
朝食を終えて、身支度を確認して、
玄関に向かう。
 
「いってきます」
「いってらっしゃい」
「学校の件は、俺の方でも確認しておくよ」
「うん、わかった」
 
家を出て、
バスに乗って、学校に向かう。
 
 
「あ、おはよ〜」
 
教室に入って席に着くと、
隣席のクラスメイトが話しかけてくる。
 
「おはよう」
「ねえ、聞いた?」
「何を?」
 
ニヤニヤと顔を歪めた顔が気持ち悪い。
 
「このクラスでも担任いじめ始めようってことになってさ」
「へぇ、それはまた」
「教師なんて立場弱いからさ〜面白そうじゃん?」
「そうね。どうなるか楽しみだね」
「このクラスって、学年上位が揃ってるじゃん?」
「まあ、そうね」
「そこが荒れたら、ばかな教師がどんな反応するのかね〜」
 
教室内を見渡すと、
あちらこちらで数人が集まって楽しそうにしている。
 
今日から、始まるのか。
 
 
まったく。
バカはどちらなのか。
 
 
とりあえず、今日は様子を見て、
今後の身の振り方を考えよう。
 
学校に来る日課がなくなれば、
自宅で勉強と株取引に集中できる。
 
 

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