食えない女である。 【オリジナル小説】【短編】

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オリジナル小説です。
 


 
 
 
※この作品は、フィクションです。
 
 
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食えない女である。
 
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こちら↓と同じ登場人物が出てきます。
 
 


 
 

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登場人物

山田英治 (20代 会社員 平社員)

神田結花 (30代 社長夫人、経理事務)
 
神田隆二(30代 婿入り社長)
 
神田光三郎(60代 先代社長)
 
 
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うちの会社は、経営陣がぶっ飛んでいる。
 
一番ぶっ飛んでいるのは、社長夫人であり、経理事務を担当している結花さんだ。
 
先代社長の娘で、婿が会社を継いでいる。
 
 
社長である隆二さんの経営手腕も凄いが、
ぶっ飛んだアイディアを出してくる結花さんとの組み合わせで、
うまいこと言っているのが、この会社だ。
 
 
先代社長は、会社の用務員のようなことをしている。
主に、会社前の花壇や、中庭の手入れをしたり、
社内の清掃をしている。
 
もちろん、1人でも回らないので、
大学生のバイトを数人雇って、シフトを組んで回している。
 
彼らは、先代社長と一緒に仕事をすることに初めは戸惑うのだが、
先代の人柄もあって、円満に仕事をしているらしい。
  
  
穏やかな性格をした先代・神田光三郎氏。
 
なぜ、こんな穏やかな人から、
あんなぶっ飛んだ女が生まれたのか。
 
 
社員全員が思っている。
というか、みんな本人に言っている。
 
 
「結花さん、領収書お願いします」
「はいはいーもらいますよー」
 
 
俺は、新卒で入った会社でパワハラに遭いまして。
 
昼休みのカフェでパワハラ上司に罵詈雑言を浴びせられていた時、
ちょうど居合わせた結花さんが、上司に水をぶっかけたことがきっかけで、
この会社に転職してきた。
 
 
初対面の結花さんが、ブチ切れた状態だったので、
入社後、しばらくは彼女が苦手であったが、
 
意味もなく怒ったりしないし、
いろんな面がぶっ飛んでいる以外は、
とても優しく、仕事がめっちゃできる人なので、
 
次第に、普通に話せるようになった。
  
  
「山田くんさ、コスプレしてバイトする気ある?」
「は?」
 
いきなり何言ってんだ、この人。
 
 
「いやー、実はさ。今度、同人誌の即売会があるんだけど」
「あー、副業のアレですね」
「そー。売り子が足りなくてさ。山田くんに、どうかなって」
 
 
結花さんの副業、ネット小説を書いているというのを聞いて、
読んでみたけど、面白かった。
 
人気が出るのもわかる。
  
  
個人出版で、本を出していることも知っている。
  
商業出版の話も出たらしいが、
断ったらしい。
 
勿体無い。
 
 
 
「なんで俺なんすか?」
「え、ちょうどいたから」
「そっすか」
 
 
この人は、こういう人である。
 
 
「コスプレって、なんですか?」
「ただの執事スタイルだよ」
 
 
執事って、結婚式で新郎が着るみたいなやつか?
 
 
「嫌ですね、恥ずかしいので」
「そっかー。じゃあ、普通の格好でいいからやらない?」
「即売会って、人が多いんですよね。嫌です」
「そっかー。だめかぁ」
 
 
というか。
 
 
「今のって、最初に無理そうな条件でお願いして、後からいい感じの条件に変えて、承諾させるっていう手法ですよね」
「お、よく勉強してるじゃん」
 
 
結花さんは、嬉しそうに笑った。
 
 
「そういう小手先の技を色々覚えて、実際に使っていくのも大事だけどさ。こうやって、自分がその対象になった時に、思考を巡らせて断ったりするのも大事だからねぇ」
 
 
彼女は、こうやってたまに罠を仕掛けてくる。
 
言葉で人を惑わそうとしてくるので、
それをうまく拒否することが必要になってくる。
 
 
この人は、仕事と関係ない話をしているし、
適当なことを言うけれど、
その本質は、とても大事なことだったりもする。
 
 
アホそうに見えて、
いや、実際アホなんだけど、
 
実のところは、食えない女なのである。
 
 

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