決めることに、戸惑う。 【オリジナル小説】【短編】

 

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オリジナル小説です。
 
 


 
 
※この作品は、フィクションです。
 
 
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決めることに、戸惑う。
 
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登場人物

山田英治 (20代 会社員 平社員)

冴島康太(30代 会社員 課長)

宇崎遼太郎 (40代 会社員 部長)

神田結花 (30代 社長夫人、経理事務)

 
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自分は、このままでいいのか。

そう考えることはあるけど、
自分には、今のままで頑張るしかできないのだと思う。

「山田、昼飯行こうぜ」
「あ、冴島課長、お疲れ様です」

俺が務めている会社は、小さいながらも経営はそれなりに順調で、
一応、役職はあるが、

あまり関係なく接してくれる、
それなりにフランクな人間関係だ。

社長、というか、
その奥さんが、ぶっ飛んだ人なので、
わりかし自由な感じだ。

先日、我社にも「副業解禁」のお達しが出た。

奥さんが提案したらしい。

奥さんは、言うなれば「オタク」で、
自分で書いた漫画などを自費出版などをしていて、
更には、ブログで収入を得ているらしく、

一応は、我社の社員であり、
会計事務などを担当し、ばりばりに働いているので、
副業での収入となるが、

本人曰く、
「私が、本業に支障出さずに、ここまで稼げるんだから、我社でも副業解禁しても問題なくね?ってか、私の都合で解禁する!!」との事だ。

仕事はできるのだが、
ちょっと、あほな感じがするのがたまにキズな社長夫人である。

副業が解禁されても、
うちの会社は給料は、そこそこいいので、
今の段階では必要性を感じない。

ただ、今の世の中を考えると、
いろいろ考えたほうがいいのかもしれない。

「山田くん、冴島くん。昼飯か?」
「宇崎部長、お疲れ様です」
「私も一緒にいいかな。ちょっと相談したいことがあって」

部長は、よく相談事を持ってくる。
娘さんが、反抗期らしく、若者の意見を聞きたいらしい。

奢ってくれるわけではないが、
後日、菓子折を持ってくてくれる。

これも、社長夫人からのお言葉で、
「上司とか部下とか、奢り奢られはよくない!昼飯奢ったくらいで部下が言うことを聞くと思うな、調子乗るなよジジィ!!」との事だ。

この言葉は、パワハラセクハラで問題を起こしまくっていた、前社長時代からの管理職(定年間際)に言い放ったものだ。

その管理職は、キレてライバル会社に転職した。

社長夫人から「その会社、叩き潰すぞ」と言われた時は、ちょっと怖かった。

あとで聞いた話だが、
昔から、気に入らなかった男なんだそうだ。

ちなみに、現社長は婿であり、
前社長の長女が、その人だ。

オタクであるが、素質やヤンキーである。

前社長は、引退して
用務員みたいな仕事をしている。

社屋前に花壇には、
いつも綺麗な花が咲いているのだ。

たまに社員とおしゃべりしているが、
前に話した時に、

「いやぁ。もうね。いろいろ疲れちゃったんだよねぇ。だから、後は娘たちに任せたんだよ」と、笑っていた。

冴島課長が、
「結花さん、たまに怖いんですよねぇ」と愚痴ったら、
「うん、私も怖い」と笑っていた。

そして、「だから、任せられるんだよ」とも。

宇崎部長と、冴島課長といつもの定食屋に行き、
それぞれ注文を済ませる。

「で、相談なんだけど」

まあ、大したことではないだろうけど。

「結花さんが副業解禁したじゃない?」
「ああ、ほぼ自己都合でしたけど」
「で、気になったからブログを教えて貰って見てたらさ、娘が知っていたんだよ」
「そんなに有名なんですか?」

それなりに稼いでいるとは言っていたが。
そんなに有名なのだろうか。

「なんか、若い子に人気のネット小説家らしくて!」
「へぇ」
「娘にサインを頼まれてさ」
「そんなに」
「書籍化の話もあるって」

思ったより、凄いんだな。
ってか、あの人、有能すぎないか。

「実は、学生時代、文学部だったんだ」
「へぇ」
「結花さんの作品を読んでいたら、昔の熱が蘇ってきてね」
「はぁ」
「また、なにか書いてみようかと」
「いいんじゃないっすか?」
「で、ネットに公開したいんだけど。どうしたらいいかわからなくて」
「ああ、それを俺らに聞きたいと」
「娘さんに聞いたらどうですか?」

部長の顔が暗くなる。

「家族に、ばれるの恥ずかしいし」

まあ、娘、反抗期だしな。

「収益を得る感じでいいんですかね」
「うん、副業も解禁されたし」

というか、結花さんに聞けばいいのでは。

「結花さんに聞こうと思ったんだけど、彼女、人に教えるのありえないくらい下手だから」

ああ、確かに。
あの人は直感タイプだからな。

部長、その判断は正しいです。

「うーん。今は投稿サイト自体で収益を得られるところもあるし、自分のサイトでってのもあるけど」
「気軽に始めるなら、投稿サイトじゃないですか」

課長と2人であーだこーだと話をする。

その話を聴きながら、部長がメモをとる。

話がひと段落すると、
部長がメモを眺めながら、深く息を吐く。

「ありがとう。だいたいのことはわかったよ」
「いえいえ」
「まあ、とりあえず何作品か書き上げないといけないんだけどね」

この会社、個人の趣味に対して寛容だよなぁ。

お盆と正月は、大きなイベントがあるとかで、
大半の社員が参加するから、絶対に休みだし、
むしろその筆頭が、社長夫人だし。

なんか、社長も駆り出されているらしい。

「副業って、うちの会社の業務に関係ないものならいいんでしたっけ?」
「そう、申告しなくてもいいけど、税金関係はちゃんとしろって」

本当、緩いな。

「うちの会社って、緩いですよねぇ」
「まあなぁ」
「でも、前社長、現社長、結花さんを含めて経営陣は、キレると怖いよ」

まあ、それはわかる。
だからこそ、我社にはセクハラやパワハラをする人は、ほぼ居ない。

結花さんが、発見次第、きちんと対処するし、
社長に報告をして、減給などの処分をしているから。

女性社員たちも仕事は真面目にしているし、
彼女たちは、自分の趣味を大事にしているので、
他人に構っている暇はないらしく、
女性の人間関係も、悪くない。

「山田くんは、副業したいと思うの?」
「うーん。給料の不満は無いですけど、世の中の状況を考えると、したほうがいいのかな、と」
「まあ、そうなるよねぇ」

結花さんや、部長みたく
趣味を通じて収入を得られればいいのだけど。

これと言って、収益化できそうな趣味もない。

「まあ、本業に支障出さないというと、ブログとかなんですかねぇ」
「大変みたいだけど。今、金に困ってないなら、地道にやってみたら」
「ネタが無いっす」
「向き不向きってあるからねぇ」
「課長は?」
「俺は、特に考えてないかな」

そうなんだ。

「するとしても、流行りのすきまバイトとかかな」
「ああ、流行ってますよね」

うちの会社は休みも多いから、
いいかもしれない。

「まあ、絶対にしなきゃ行けないわけじゃないし」

そんなことを話していたら、
頼んだ定食が運ばれてきた。

魚定食、肉定食、麺定食。
各自、日替わりである。

ご飯と味噌汁は、セルフでおかわり自由。

「とりあえず、食べますか」
「部長、箸とってください」
「はい、どうぞ」

「「「いただきます」」」

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