私は、仲良くあり続けることができない。 【オリジナル小説】【短編】
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オリジナル小説です。
※この作品は、フィクションです。
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私は、仲良くあり続けることができない。
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登場人物
河合 琳 (女子高生)
田中 圭一 (男子校生)
安藤 香苗 (女子高生)
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「なあ、女子から見て、安藤ってどうなの?」
新学期に行われた席替えで、
隣になった田中が、何気ない感じで聞いてきた。
そういう質問自体が、地雷というのがわかっていないのか。
いや、わかっていないから聞いてくるのだろう。
「どうって?」
「なんつーかさ、鼻についたりしないん?」
彼が言っている安藤というのは、
クラスカースト上位にいる美人、安藤香苗のことだ。
カースト下位にいる私は、彼女と必要最低限の会話しかしたことがない。
「特に気にしたことはないかな」
そもそもなぜ、私にそれを聞いたのだ。
「俺の彼女がさぁ。安藤のことあんま好きじゃないらしくて」
「へぇ、あんた自身はどう思ってるの」
「えー、可愛いなぁ、美人だなぁ、って」
「それ、彼女の前で言うんじゃないよ」
ってか、お前がそう言ったから、
彼女さんは、安藤さんのことが気に入らないのでは?
「なんで?」
「じゃあ、あんたは彼女が自分以外の男をかっこいいって言っていたら、どう思うの?」
「んー。嫌かも」
「その男のこと、どう思う?」
「気に入らないかも」
「そういうことだよ」
田中は、やっと自分がしてしまったことの重大さに気づいたらしい。
「やばい、俺、謝るべき?」
「謝ったら逆効果だろ。誠心誠意尽くしなよ」
「えー、めんどくさい」
「そんなことを言われる私の方がめんどくさいよ」
なんだよー、と拗ねる男から視線を外して、外を見た。
「お前、友達いないから、俺がおしゃべりに付き合ってるのに」
「そういうところも、彼女に嫌がられるんじゃないかな?」
「大丈夫だって、お前のことは兄貴の彼女って言ってあるから」
まじかよ。
言ったのかよ。
こっちは、彼氏持ちなこと隠しているのに。
「ってか、お前が俺の兄貴と付き合ってるの、みんな知ってるぞ」
「なぜ?」
SNSもやってないし、
友達もいないから、話したこともないのに。
「いや、お前ら、よく目撃されてるから、その度に俺が聞かれる」
「まじで?」
田中は、呆れた顔をする。
「最近で言うと、パンケーキ屋、映画館、喫茶店、ショッピングモールだな」
なぜ、そんなことになっているのだ。
「兄貴も目立つけど、お前も目立つからなぁ」
「いや、私らオシャレさんなわけじゃないし、地味だし」
いつもシンプルでラフな服装だし、
どう見てもモブだろう。
目立つわけがない。
「いや、オーラがあるのよ」
「なんだそれは」
「歩き方っていうか。お前ら剣道やってるからか、姿勢が綺麗なんだよ」
そんなに目立つのか。
「で、お前に友達がいないから、全員が俺に聞きに来るってわけ」
「そう、対応ありがとう」
「うん、お前、友達作れよ」
「友達は、作るものではないよ。できるものだよ」
「それ、作る気ないだろ」
昔から、集団でいるのが苦手で、
友達を作ろうと頑張った時もあったが、
めんどくさくなって、やめた。
そしたら、気持ちが晴れやかになった。
友達はいないが、
剣道仲間ならいる。
ちなみに、部活には入っていない。
近所の道場に通っている。
「お前と、仲良くなりたい奴は、たくさんいるんだよ」
田中には、そう言われたけれど、
曖昧に笑っておいた。
仲良くなったとしても、
どうせ長続きしないのだ。
私には、それに関する胆力がない。
「君と、こうやって話すのは、君が彼氏の弟だから、だよ」
そう告げれば、彼は「わかってるよ」と小さく呟いた。
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