嘘で塗り固められた彼女は綺麗なものを求めていた【オリジナル小説】【短編】

 

命が尽きる瞬間。
瞳に映るものはなんだろうか。
 
どうせなら最高に美しいものがいい。
こんな醜い世界で生きていたのだから、
死に際くらい、綺麗なものが見てみたい。
 
 
彼女は美しいものを求めて、どこかへ消えた。
 
 
「人生なんて、クソつまらない」
 
彼女は、いつも吐き捨てるように毒づいた。
いつも笑顔で楽しそうな彼女には似つかない汚い言葉。
 
「君はいつも楽しそうに、幸せそうにしているのに」
 
いつもキラキラ輝いている彼女の瞳が、ひどく濁った。
 
「ああ、あなたは私のことを、何もわかっていないのね」
 
黒く、冷たく、色のない声。
明るくて元気で、いつも笑っている彼女からは想像できず、俺は固まってしまった。
 
「消えてしまいたいくらいに、人生はつまらないの」
「何をしても楽しくないし、嬉しくもない。笑いたくなることなんて何もない」
「けれど、消えてしまえるような勇気はないから」
「クソつまらない人生を、なんとかして楽しくするしかないのよ」
「私が楽しそうに幸せそうに見えるのは、虚構でしかないわ」
 
ああ、これが本当の姿なのだ。
笑いたくて笑っているわけでもない。
 
俺を含めて、彼女の周りいる全ての人間が誤解していたのだ。
いや、理解しようともしなかった。
 
「あなたは、私を愛していると言ってくれたけれど」
「本当の私を理解できないのなら、これでサヨナラね」
 
彼女はそう言って、俺の前から姿を消したのだ。
 

 

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