桜を応援する。【オリジナル小説】【短編】
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オリジナル小説です。
※この作品は、フィクションです。
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桜を応援する。
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どうして、そんなものにこだわるのか。
「ねえ、ス⚪︎バの桜が始まったよ」
定期的にこの言葉を聞く。
この前は、バレンタインだった。
「へえ」
新しいものが出るたびに、付き合わされる。
「飲みにいこうよ」
1人で行けばいいのに。
そう思うが、彼女はどうしても俺と行くらしい。
「冷たいやつだろ?この寒いのに、嫌だよ」
無駄だとわかっていても、拒否の言葉を口にする。
「えー。あったかいのもあるし!」
知ってるよ。
行きたくないだけだよ。
「第一、クソ寒い2月になんで桜なんだよ」
梅の方が、まだわかる。
「この間、立春だったじゃん」
まあ、確かに。
暦の上では、春だよな。
「異常気象とかだしさ。
実際に季節に合わせていたら、企画とか準備とか無理じゃん」
こいつ、意外とビジネス的な思考してるんだよな。
「でも、桜は大事じゃん。日本人の心じゃん」
かと思えば、曖昧なことも言う。
「だったら、日本人がなんやかんや大事に空いている旧暦とかで、全く問題ないじゃん」
じゃんじゃん、うるさい。
「だから、飲みにいこう」
だからってなんだよ。
そう思ったのがバレたのか、畳み掛けられる。
「桜も、今咲くために、頑張って準備してるから」
確かに、芽吹は始まっているだろうな。
「私たちも、桜を飲んで、応援しないと」
こいつ、いつも適当なこと言うよな。
「わかったよ」
俺が折れるのも、いつものこと。
「せめて、日差しがある午後でいいか?」
午後は、暑いくらいだしな。
「やったー」
口では勝てない。
惚れた弱みなのだろうけれど、
俺はこの女の笑った顔が好きだ。
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