オリジナル小説 / 短編

生きることはクソつまらないから、自分で楽しくするしかないのだ。

 

 最近、「朝活」というものが流行っているらしい。
 私は流行りだす数年前から朝活を実行していた。当時は「おまえ、朝早くからバカじゃないの?」とか言われていたが、私には朝活しなければならない事情があったのだ。
 
 先日、当時のことを思い出したので語ろうと思う。

 

 当時の私は介護施設で働いていた。給料は高校生並みで有給も退職金もないブラック企業だ。通所介護という日帰り施設っだったし、介護施設と言っても新設されたところで素人の私から見ても「調査が入ったら、一発でアウトだな」というのが丸わかりだった。
 ただひとつよかったことは、「サービス残業もないが、残業も認めない」という場所だったので毎日きっかり定時で上がることができた。故に、給料は安くても時間には余裕があったのだ。
 本当、世の中にはいろんな会社があるもので他人から見たら最悪な環境でも、「いずれフリーランスで仕事がしたい」と考えていた私にとってはちょうどいい職場だった。
 さらに実家稼業を手伝っており会社経営や経理の知識がある私は、不条理なことを言われてもさり気なく「こういう方法がありますよ」とアドバイスしたり、「給料明細を最低3年は自分で保管しておくことは労働者の義務ですからね」などと遠回しに脅したりもしていた。そして、一番大変な入浴介助を一手に担っており、施設の雑務も殆どしていたので、上司も扱いずらかったようなのだ。
 
 正社員としてフルタイムで働いていたが、手取りで12万くらい。
 そんなんで生活していけるわけがない。
 単純に言えば「社員を飼い殺しにする会社」なのだ。
 
 しかし、そんな簡単に飼い殺しにされる私ではない。
 そんなわけで、副業を開始した。

 

 正直なところ、「クビにしてくれないかな」と思っていたので副業していることが「それとなく会社にバレるように」と会社以外のところで公言していたので、上司も社長も私の副業を知っていたのかもしれないが、勤めているときも辞めた後もなにも言われなかった。
 私の副業は基本的に「文章を書くこと」だったので、入浴介助のときに人生の大先輩たちからいろんな話をしてネタを探していたのだ。戦時中のことや、人生訓など参考になることがかなりあったので、仕事は大変で給与も安かったけど、副業に活かしていたので問題はなかった。
 
 ただ、入浴介助はかなり大変で1日の仕事を終えて家に帰ってからでは疲労困憊で頭が働かないし、夜遅くまで起きていると翌日の仕事に支障を出してしまう。
 いろいろ考えた結果、朝活を始めた。
 仕事が終わって家に帰り、ご飯を食べてお風呂に入って、すぐに寝る。だいたい夜7時くらいだ。
 朝、3時くらいに目覚ましをかけずに自然に起きた時間から副業を開始する。
 
 目覚ましをかけていないので、十分な睡眠をとっているし、介護の仕事にも支障を出すことはない。
 もちろん、疲労がたまっているときは朝6時過ぎに起きることもあった。それでも家から車で5分のところに会社があったので、十分に副業ができた。

 

 もちろん、朝活をしていることは世間話として上司に話していた。なぜなら、夜に仕事の電話をしてくることがあったので釘を打っておいたのだ。
 あと、家族には大不評だった。
 
「いい年をした大人が、夜7時に寝るのはおかしい!」
 
 まずは、そんな文句から始まった。
 あとは、日が昇るのが早い夏は仕事前の運動として朝3時に散歩をしていたので、「そんな朝早くに起きるなんて、近所の人が変に思うだろ!」とも言われた。
 
 はっきりと言えば、仕事や私の収入面などを考慮しようともせずに「世間体」だけを気にしていたのだ。手取りで月に12万しか貰っていないのに、この先どうやって生きて行けというのか。娘の人生をどう思っているのかと、呆れてしまった。というわけで、親からの苦情は無視していた。
 
 基本的に「仕事優先」、「散歩も朝活も稼ぐため」であり、生きていくために必要なことだと認識していたので、周りになにを言われても平気だったのだ。
 だって、文句を言う人はいても、私に仕事やお金を与えてくれる人はいないのだから。無視して自分のためにせっせと稼ぐしかない。
 
 会社でも変人扱いされた。
 もしかしたら、副業がばれていて私を「おかしい」という言葉で否定することで、副業を辞めると思っていたのかもしれないが、高校生並みの給与しか与えてくれない会社なのだから無視していいのだ。
 
 今思うと、あの頃の私は「ギラギラ」していた。

 

 現在の私は結婚して、主婦をしながら在宅ワークをしている。
 穏やかに、のんびりと暮らしていて物足りないと感じることもあるけれど、あの頃に戻りたいとは思わない。
 困ったことと言えば、デスクワークのみになったので体重が激増したことだが、当時はやばいくらいに痩せて、いや。やつれていたので太ったことはいいことなのかもしれない。ただ、太りすぎたので少しは痩せなくてはならない。
 
 なにが言いたいのかというと。
 ブラック企業で低賃金で働いて苦しんでいる人は多いのかもしれない。
 けれど、考え方や生活時間を見直すだけで「副業」や「なにか」を始めることはできるのだ。
 
 真っ黒な会社であっても、なにか利点があるかもしれない。
 その利点を利用して、別のことができるかもしれない。
 
 ブラック企業にいたころは、仕事は大変だったし給料も安くて副業もしていたけど、私にとっては「有意義」な場所であり、楽しい時間だった。
 
 穏やかに暮らしている今でも、大変なことはあるし、感情が乱れることもある。

 

 もともと「人生なんてクソつまらないもの」だと思っていて、「自分の人生は、私が楽しくするしかない!」と悟ってしまったので、どんな場所でも「なんとかして」、楽しく生きるしかない。
 
 奈落の底にいたとしても、それを利用して楽しい場所に行く準備をすることも、抜け出すこともできるのだ。

 

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rui@rui-world.net
主婦です。 気ままに活動しています。