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第1話 ただ、生きている。それだけのこと。②

  

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 心から笑った記憶はないし、笑いたいと思ったこともない。
 顔に笑みを張り付けて、その場を乗り切るだけ。
 
 
 私の感情は、その場の状況によって作られる。
 
 笑うべきところでは笑って、泣くべきところでは泣く。怒るべきところでは怒って、その場所に適応するだけだ。
 
 
 それが、私自身が持つ本来の感情ではないことなど、誰も気づいていなかった。
 気づいてほしいと思った頃もあったけれど、本当の私を理解しようとする人はいなかったから、諦めるしかなかった。

 
 それでも、諦めてしまえば楽になった。
 人間は中身など見ようとしない、見た目だけですべてを判断する生き物なのだ。

 くだらない生き物で、私も同じ生き物なのだと理解した途端、世の中のすべてが信じられなくなった。
 でも、生きるために仕事をして稼がなくてはいけないから、嘘の感情を張り付けて社会生活を送っていく。

 そうして何年も経つうちに、本当の感情がなんなのか、わからなくなってしまっていたのかもしれない。

 本当の自分と嘘の自分が混同してしまって、どれが本当の私なのかわからなくなってしまった。

 どんな人間なのか、どんな考えを持っているのか、自分でもわからないのだ。
 本当の私はどこにいるのだろう。

 そんなことを考えることもあったが、それも疲れてしまうだけだ。
 だから、何年も前に考えることを放棄した。

 

次のお話へ。

第2話 私は感情を作り出している。

  

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