彩られた無色(オリジナル小説)

第8話 「私という存在」が許されるためにしていることがある

タイトルを追加第7話 「人間らしさ」など捨てたはずなのに

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いつもと同じ日々が過ぎていく。

 バイトに行き、家に帰って、休みの日には図書館に行く。

 ただ一つ違うのは、休みが合えば海野さんに会くらいだ。

 バイト以外に人と会うなんて本当に久しぶりのことだった。

  違和感がないわけではないが、それでも苦痛ではない。

 人と関わることを苦痛と感じない自分に戸惑いはあったが、苦痛がない分どうでもよかった。

 お互い仕事があるから、メールも電話もたまにするだけで、生活に支障など無い。

 だから、よかったのかもしれない。

 学生時代の同級生は毎日のように大した用もないのにメールをしてきて、返信をしないと機嫌が悪くなる。

 そんな煩わしいものがないから、気は楽なのだ。

 暇な学生と社会人という違いなのかもしれない。

 けれど、同級生は社会人になってからもメールの頻度が変わらなかったから、そういう問題でもないのかもしれない。

 返信を怠っていたらメールすら来なくなったから、清々していたのも事実だ。

 店長から海野さんの話を聞くことは無い。

 向こうも話題にすることがない。

 交流がないと思っているのか、旦那さんから聞いているのかはわからないが、それでも話題にならないことは救いだった。

 人との関りをどう話していいのかわからないし、そんな話題を出されても困る。私は私のペースで生きていきたい。

 海野さんは付かず離れずの位置にいる。

 会うときも図書館に付き合ってもらうことが多い。

 私が本を読んでいる横で漫画を読んでいることもある。

 海野さんが飽きてきたら喫茶店に移動してお茶を飲んで本の話をしたり、公園を散歩したりする。

 今までの私は1日中図書館に籠っていたので、たまに外に出ることが気分転換になる。

 1人では、そんなことは絶対にしないので相手がいることによって違う行動ができることがリフレッシュになっている。

 だから、海野さんが近くにいることが嫌ではない。

 いつもと違う私。

 戸惑いを感じながらも、嫌だとは感じない。

 だから、困っているのだ。

 今日も海野さんと会う約束をしている。

 彼は工場で働いているから休みが不定期で、私も同じ不定休。休みが合うことなど滅多にないはずなのに、なぜか休みが合うのだ。

 店長の策略を感じないわけでもなかったが、確認するのも煩わしかったので放置している。

 聞いても意味がないことは理解しているし、いたって普通のシフトを組まれているので文句を言うこともない。

 いつも待ち合わせは図書館。

 本の返却もあるし、新しい本を借りたいからだ。

 午前を図書婚で過ごしてからランチに行くのが定番になった。

 今は図書館に漫画も多くあるので、海野さんも退屈しないようだ。

 予約をして取り寄せないとない漫画もあるので、私のカードで取り寄せをしておく。

 漫画喫茶というものがあるのは知っているが、まだ行ったことはない。 

 約束の時間は10時。図書館は9時に開くから、その時間には行くようにしている。

 約束の時間まで本を読んで待っているけど、集中していると時間に気付かないこともある。

 ふと視線をあげると、すぐ傍で海野さんが本を読んでいて驚いて、申し訳なくて恥ずかしくて、とにかく謝る。

 そんなことをしていても笑ってくれて「この本、面白いね」と言ってくれるから、凄い人だなと思ってしまう。

 図書館に向かうことが、楽しみになってしまう。

 たまに1人で行くときがあるけれど、寂しいと感じることがある。

 他人に依存してしまうことが怖いと感じながらも、それでも傍にいてほしいと思ってしまう。

 これ以上、依存してしまう前に離れたほうがいいのではないかと。そう悩んでしまう。

 それでも、会えることが嬉しい。

 人恋しいという感情を自分が抱くことになるとは思わなかった。

 だから、必要以上に人と関わることはしたくなかったのだ。

 海野さんは、こんな私をどう思っているのだろうか。

 こんなことを考えている私を知ったら、距離を置くのだろうか。

 そんな迷いを抱きながらも、会うことが嬉しいと思う私は最低だ。

 私には友だちを作る資格など無い。

 誰も私の存在を心から許してくれる人はいないのだ。

 仕事として役に立っているから、私の存在を許してくれるのだ。

 そうでなければ、私の存在が許されるわけがない。

 だから、役にたっているわけでもないのに、傍にいることを許してくれる海野さんを嬉しいと感じながらも怖くて仕方ないのだ。

 

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泪-rui-

主婦です。

気ままに活動しています。

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