彩られた無色(オリジナル小説)

第7話 「人間らしさ」など捨てたはずなのに

  

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 初めて友だちという存在ができた。

 というよりも「友だち」と名前のついた関係が初めてなのだ。

 今まで一緒に出掛ける人間や、お喋りをする人間がいなかったわけではない。

 ただ、その人たちを友だちと認識していなかった。

「ただ、そこにいるだけの人」

 本当、それだけの人間だった。

 店長のことも、バイトの仲間もその程度にしか考えていなかった。

 相手が私のことをどう思っているのかは知らないし、それなりに仲が良く見えるように振舞ってきたから、相手は私のことを友だちだと認識しているのかもしれない。

 けれど、私は相手を友だちだと思ったことはなかった。

 そう思えなかったのだ。

 寂しい人間なのかもしれないと悩んだこともあったが、自分がそう思えないのだから仕方ないと割り切るしかなかった。

 だからこそ、「友だち」というものに対してどんな対応をすればいいのかわからない。

 人との付き合い方がわからないのだろう。

 人は裏表一体の生き物だから、私には恐怖しかない。

 それでも、海野という男に嫌悪感がなかったから「まあ、いいか」と思ってしまったのだ。

 あの日、家に帰ってから少しだけ後悔した。

 人と深く関わることは、最終的に私が傷つくことになる。

 今までの経験からも理解している。

 私は弱いから、人と関わらないようにしてきたのに。

 どうして、彼の言葉に頷いてしまったのだろうか。

 それでも、また会ってもいいかなと思ってしまうあたり、人恋しかったのかなと自己分析してしまう。

 そんな自分が嫌になってしまうけれど、今更「友だちはいらないから、もう連絡しないでほしい」とは言えない。

 あの男と話しているとき、戸惑いながらも楽しいと感じてしまったから。

 

次のお話

第8話 「私という存在」が許されるためにしていることがある

 

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泪-rui-

主婦です。

気ままに活動しています。

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