【オリジナル小説】 都合のいい神様は存在しません。 小説

【都合のいい神様は存在しません。】 第17話

 

「お母さん、おはよう」
「はい、おはよう」
 
今日は「古書喫茶Note」でのバイト初日だ。
バイトと言っていいのかわからないけれど、なんかよくわからないのでバイトっていうことにした。
 
「お父さんは?」
「急な打ち合わせが入ったって言って、慌てて出かけたわ」
 
社長さんである哲也さんから、部長に任命されたので忙しくなったのか、
最近は、なにかと忙しそうだ。
 
とはいっても、早く出社するは極稀にあるけれど残業は殆どない。
 
哲也さんは「残業する奴は無能だ」ときっぱり言い切ってしまう人らしい。
残業代で稼げなくても、もとの給料が高いし、能力があれば上がる。
さらには、仕事が成功すれば賞与もあるから問題はないと言っていた。
 
これだけ聞くとホワイト企業のように聞こえるが、やる気がなかったり向上心のない無能な社員は平気で解雇するか、自ら辞めていくのだという。
そうは言っても、研修はしっかりするし、人材育成にも力を入れているから、かなり評判はいい会社らしいよ。
 
「葉月ちゃんの初出勤をお見送りしたかったって悔しがってたわ~」
「幼稚園の遠足じゃないんだから」
 
そういえば幼稚園で初めて遠足に行くとき、お父さんも見送りにきたなぁ。
今思うと、ものすごく心配していた気がする。
その日は、お父さんが早く帰ってきた。
 
「本当、親ばかよねぇ」
「で?お母さんのこれはなに?」
「ん?」
 
テーブルの上に並んでいるのは、朝ご飯とは思えないものだった。
大きめのハンバーグ、エビフライ、目玉焼き、ポテトサラダ、フルーツの入ったヨーグルト。
飲み物は、グレープフルーツジュースと牛乳。
 
「…足りなかったかしら?初出勤だから張り切ったんだけど…」
「いや、そうじゃなくて…。いや、もういいや」
「葉月ちゃんの好きなものを作ったのよ~」
 
確かに私の好きなものだけど。
夕飯の残りとかならわかるけど、昨日はビーフシチューだったし。
 
夜にジュースを飲もうと思って冷蔵庫を開けたら、食材が多いなぁとは思ったけど、
まさか朝ご飯のためだったとは。
 
いったい今日は何時に起きたのか…。
 
「都さんのところに行くって決まってから、葉月ちゃんがウキウキしてるから…私も楽しくなっちゃって」
「…恥ずかしいから、そういうこと言わないでよ」
 
お母さんは、しっかりした人だとは思っているけれど、天然とでもいうのだろうか。
 
「さ、食べましょう」
 
休学してから、家族でご飯を食べることが増えた。
今まで、朝はギリギリに起きていたから食べなかったし、
学校帰りに友だちに付き合ってカラオケに行ったりとかで夕飯も一緒に食べなかった。
 
それでも、必ず私の分を用意してくれていた。
朝ご飯は、冷蔵庫にしまってお母さんが仕事から帰ったときのおやつとして食べていたらしいし、
夕飯は、私が夜食として食べたり、お父さんが食べたりしていたようだ。
 
文句を言うわけでもなく、ずっと用意してくれいた。
 
それに気づいていなかったわけではない。
けれど、気づかないフリをしていた。
 
距離を置いていたのは、両親ではない。
私が勝手な思い込みで、距離を置いていた。
 
学校の友達は、親のことを悪く言っていた。
だから、自分の親も同じだと思い込んでいた。
 
 
よく見たら、よく考えたら…。
私の両親は、友だちが文句を言っているような人たちではなかったのに。
 
 
朝ご飯を食べ終えて、お母さんは仕事に向かった。
私は、食器を洗ってリビングを掃除してから出勤する。
 
これも、両親と話し合って決めたことだ。
慣れてきたら、朝ご飯を作ることも検討している。
 
というか、都さんに料理も教わっていく予定なので、料理を覚えてからになるが。
 
 
今日の豪華な料理を作った調理器具とかは、すでに洗い終わって片付けてあったので、
朝食で使った食器類だけを洗っておく。
 
 
それが終わったら、「古書喫茶Note」へ向かうのだ。
 
 

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泪-rui-

主婦です。

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