【オリジナル小説】 都合のいい神様は存在しません。 小説

【都合のいい神様は存在しません。】 第8話

私が学校に行かなくなった理由を簡単に説明した。
 
ハゲができたことを口にするのは恥ずかしかったが、言葉にしたら、なんだか楽になった。
 
都さんは「あらあら」なんて言ってから、「そりゃあ、びっくりするわねぇ」と穏やかに笑っていた。
 
「パッと見ただけじゃ、わからないけど…見せてもらってもいい?」
「あ、はい」
 
カウンターから出て、私の後ろに回った都さんは私の紙を指で梳いた。
 
「綺麗な髪ね。ちゃんと手入れしている証拠よ」
 
こんなに丁寧に髪を触られるのは初めてだった。
美容院でも、こんなに優しくは触らない。
 
なんだか、くすぐったくて、恥ずかしい。
 
「どこらへん?」
「てっぺんより、少し右です」
 
都さんは、私の頭にあるハゲを探している。
 
「ん~。あ、これね」
「・・・はい」
 
こんな綺麗な人にハゲを見られたと思うと、ものすごく恥ずかしいけれど仕方ない。
 
「そうねえ。すごく小さいものが3つあるわね」
「え!?」
 
思わず大きな声を出してしまった。
 
奥で新聞を読んでいた旦那さんがチラリとことらを見たが、「気にしないで」と笑って、すぐに新聞に目を落とした。
 
 
「これは、病院に行ったほうがいいわね」
「治るんですか?」
 
恐る恐る聞いてみたが、都さんは「さあ?」と軽く笑った。
その言葉にショックを受けたけど、彼女は言葉をつづけた。
 
「私はお医者様じゃないからねぇ。でも病院は紹介するわよ」
 
優しい声で、私の頭を撫でる。
 
「大丈夫よ。私くらいの年になるとねぇ。大体のことはなんとかなるし。ならなくても生きていけるのよ」
 
優しい声だし、まとっている空気も穏やかなのに、その言葉は私の心に響いてくる。
 
「ありがとうございます」
「とりあえず、そろそろお医者様が来る時間なのよね」
「はい?」
 
なんのことだと、間抜けな声を出したとき、店の扉が音を立てて開いた。
 
「お~、都ちゃん。あいつは来ているか?」
 
アロハシャツを着たおじいちゃんが元気よく入ってきて、都さんに話しかけた。 
 
「ちょうどよかったわ。先生、この子を診てもらってもいいかしら?」
「お?どうしたんだ、嬢ちゃん」
 
もしかして、このチョイ悪じじぃみたいな人が医者なのだろうか。
 
「安心して。半分は隠居しているようなものだけど、今でいうところのスーパードクターらしいから」
 
世の中にはいろいろな人がいるということは理解しているけれど、それが事実であることを初めて体験した気がする。
 
 

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泪-rui-

主婦です。

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